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絶望の隣に座り続ける

先週の台風が過ぎてから、朝晩の空気に少しずつ秋の気配を感じるようになりました。高くなった空や、夕暮れの色合いに、季節の移ろいを覚えます。


さて、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」をご覧になっている方はいらっしゃいますか?アンパンマンの生みの親・やなせたかしさんと、その奥様・暢(のぶ)さんの人生を描いた物語です。いよいよ最終回まで3週間を残すところとなりました。

劇中で紹介された、やなせさんのこんな詩があります。



絶望のとなりにだれかが 

そっと腰をかけた

絶望は となりのひとに聞いた

「あなたはいったい誰ですか」

となりの人はほほえんだ

「私の名前は希望です」

――『希望の歌』やなせたかし詩集より




この詩は、実は私自身が中学生の頃、担任の先生からいただいたメモに書かれていたものでした。思春期に悩んでいた私を気づかって手渡してくださったのだと思います。当時は作者がやなせさんだとは知りませんでしたが、今でも大切にしています。


そして今、私たちのホームにも「絶望」の中に立ち止まっている若者たちがいます。

どう生きていけばいいのか

どうすれば自分を好きになれるのか

心が晴れる日は来るのか――そんな問いの中にいます。


やなせ青年もまた、決して平坦ではない人生を送りました。けれども、周りにはいつも「寄り添い、叱咤激励してくれる人たち」がいました。そこから彼は「希望」を見出していきました。


ホームを立ち上げて6年、彼らと出会って約10年。

いまだに「希望」を探し続けている彼らの隣に、私たちは寄り添い続けたいと思っています。ありがたいことに、ここ数年ではスタッフだけでなく、就労先の上司の方、相談支援の担当者、ご寄付をくださる方、そして主治医の先生まで、多くの人が彼ら一人一人に心を配り力を貸してくださっています。これほど心強いことはありません。


そして関わる誰もが願っているのは――

「彼らが希望を見つけ、その顔が光り輝く瞬間を見たい」ということ。

その日を信じて、私たちは共に歩み続けます。

絶望の隣に座り続け、いつかその隣に“希望”が立ち上がる瞬間を共に迎えるために。


【文責:花岡】



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